「たまたま以下のようなページを見たのだが」
「うん」
「ちょっと眉に唾を付けたくなったな。今現実に原発事故が近くにある状態で、けっこう迷惑かも知れない」
「え? だって、原発がどんなものか、意外と知らない人が多いというのは君も言っていたいたじゃないか」
「それとこれとは別だ」
「どういうこと?」
「文章そのものが誠実ではない可能性がある」
「ええっ?」
「原発の問題ではない。そういうレイヤーの問題では無い」
「原発にはリスクがあるという指摘を否定しないわけでは無いのだね?」
「原発にはリスクがある。当たり前だ。そんなことは過去の原発事故も事例を見ればすぐ分かる。問題はそこにはない」
「どういう点に問題があるのか教えてくれよ」
- 最初の1文が「私は原発反対運動家ではありません」であるのに、書かれた文章は「原発反対運動」そのものである (まずそこで疑問符が付いてしまう)
- 文章が**無駄**に長く、途中でうんざりして通して読めない (典型的な中身の無い文章に中身があると見せ掛けるテクニック)
「それだけ?」
「いやいや。ボルトを固定する際、対角線で締めるなんて当たり前すぎてエンジニアだったら無意識的にやる。身体に染みついてるから、意識する必要なんてない。放射能が怖いからそこまで気が回らない、なんてことはあり得ない」
「エンジニアじゃない人材が仕事をしてるってことだろ?」
「それってさ。実は本人に人望が無いから優秀な人材が部下に付かなかっただけ、とも読めるよ」
「ええっ?」
「だからさ。驚くほどダメな原発の現場を告発しているつもりかもしれないけど、実際は、『僕は本当は原発の仕事なんて引き受けられないほどの人望の無いダメ野郎ですが、危険な原発作って、皆さんを危険に晒しました』って告白文書になってるのかも知れないよ」
「なんと」
「実はさ。この話を書いている途中にもう1つとんでもないことに気付いてしまったのだ」
「え? どこ?」
「以下の箇所だ」
- 例えば、ボルトをネジで締める作業をするとき、「対角線に締めなさい、締めないと漏れるよ」と教えますが、
「この文章のどこがおかしいの? 対角線に締めろと教えるのは当たり前じゃ無いの?」
「基礎教育の中で教えるべきことで、現場でいちいち言うことじゃないと思うが、問題はそこではない」
「どこ?」
「『ボルトをネジで締める』という表現だ」
「あれ。そう言われると違和感あるな」
「ボルトとは、そもそもこう言う意味だ」
WikiPediaより
ボルト (bolt) とは、部品と部品を締めつけ固定するための機械要素で、ねじの一つ。
「ありゃ? 既にボルトがネジの一種なのに、それをネジで締めたら変だね」
「もちろん、ボルトに更にネジを入れる穴が開いている特殊なボルトもある得るのかも知れないし、ここでいうネジはねじ回しの略のつもりで書いているのかも知れないが、エンジニアが他のエンジニアの情報を伝達する文書としてはうかつすぎる表現だろう」
「それってどういうことだろ」
「可能性は2つある」
- 書いたのはエンジニアではない原発反対運動家 (エンジニアを偽装して書いた)
- 書いたのは原発の現場で仕事をするにはお粗末すぎる現場を知らない未熟エンジニア
「でも、現場監督として長く働いたって主張しているよ?」
「現場でふんぞりかえっているだけで、現場のリアリティを何も知らず、ボルトの締め方を知っている程度で自慢しちゃうタイプかもしれないよ」
「本当に?」
「さあな」
余談 §
「もしかして、『ボルトをネジで締める』って表現を使う業界があるんじゃないの? 君が知らないだけで」
「そう思って、googleさんに『ボルトをネジで締める』を聞いてみたよ」
「その結果は?」
「2つのケースでやってみた」
「最初の方はどうだった?」
「ボルト、ネジ関係のページがいっぱい出てきたが、ざっと見た範囲でこういう表現は無かった」
「後者は?」
「おそらく同じ文章のコピーと思われるものだけがずらずらと出てきた」
「そうか。真面目な技術的な告発文書だと思われて非常に多くのコピーがネット上に出回っているんだね」
まとめ §
「最後にまとめるぞ」
「うん」
- 原発にはリスクがあって当たり前。どんなに安全に配慮しても100%はあり得ない。これも当たり前
- でも、この文章は眉に唾を付けた
「つまり、100%テストをパスしたプログラムは作れるけど、バグの無いプログラムは作れないってことだね」
「そうだ。テストが網羅していない項目は見過ごされるかも知れないし、判断に恣意性が入る要素は問題があっても問題なしと評価される場合もあり得る。しかもテストのバグという問題もあり得る」
「原発も同じだってことだね」
「そうだ。安全基準を100%満たしているからと言って、絶対安全という保障はあり得ない。最悪、安全基準100%という報告書そのものがねつ造される可能性だってあるわけだしね。だから、事故の可能性は絶対にゼロにはできない。本来なら常識レベルの前提だ」
「ゼロじゃないから今回は事故が起きてるわけだね」
「そうだ。そんなことは既にマーフィーの法則で既に以下のように示されている」
WikiPediaより
"Everything that can possibly go wrong will go wrong."「不都合を生じる可能性があるものは、いずれ必ず不都合を生じる」
「泣けてくるほど古い話だね」
「過去に学んでないってことだ」
「それでここまでやってきた話は信じていいの?」
「気になるなら自分で裏を取れ」
「君は正しさを保障しないんだね?」
「もちろんだ。当たり前だろ? 君が信じるか否かは、君が自分で主体的に判断することだ。おいらがやることじゃない」